南イタリア遠征記
〜グランブルーの青い海と俊輔に逢いたくて〜

☆アグリジェント編☆前編


★冷たい風が吹きすさぶバスターミナル
1回のトイレ休憩をはさみ、約2時間後にアグリジェントのバスターミナルに到着。どんよりと曇っていて風が強い。いやだわ、雨が降るのかしら。

アグリジェントは一泊だけで明日はタオルミーナへ移動するので、ホテルへ行く前にタオルミーナ行のプルマンの時刻表を手に入れたい。バス会社を探さなきゃ。そこで、私がタクシー乗り場で順番待ちしながら荷物番をして、うさこさんがバス会社を探しにいくことになった。

10分経過。タクシーは一台も来ないが、次々とお迎えの車がやってきて人が減っていく。
あれ? これってタクシー待ちの列じゃないの? タクシーの看板が出てるんだけど?
うさこさんは戻ってこないし、ターミナルは人気がなくなってくるし、だんだん寂しくなってくる。それに風が冷たくて寒いよ〜。Gジャンのボタンを全部締めても震えてしまう。ジッとしていられなくて地団太を踏む私。
私はすっかり冷え切っているというのに、隣に立っていたイタリア人女性は恋人が車で迎えに来て、人の目の前で抱き合いながらチュッチュとキスを交わしている。そちらは熱くていいですね。

しばらくすると、ついにタクシー乗り場は私だけになってしまった。と言っても、タクシーは全く来ないんだけどさ……。
うさこさ〜ん、早く戻ってきて〜! 凍えちゃうよ〜!
心の叫びが通じたのか、うさこさんが戻ってくるのが目に入った。だけど、変なオジサン付きだ。あなたは誰?



<うさこのオーバーラップ>
バスターミナルには小屋のような切符売り場はあるが、中を覗いても、だれもいない。昼ご飯でも食べに行っちゃったのかなあ。しかたがないので、リーメイさんに荷物の番を頼んで、あたりの探索に出る。

パレルモのように、旅行代理店みたいなのがあれば時刻表がもらえるかもしれない。でも、通りに面していくつか見つけた看板の店は軒並みクローズ。裏手に回ってインフォメーションも探してみるが、どうもそれらしいのはない。一旦、リーメイさんのところに戻って報告。ごめんね、もう一度聞いてくるね。

再び切符売り場に行って見ると、今度はお兄さんがいた。時刻表があるかと聞いてみる。質問するのはいいが、問題は答えである。聞き取るのがむずかしい。ましてや理解となると……(汗)。
お兄さんは大きく手を伸ばして、ターミナルの外を指差し、「タオルミーナはねえ、ここじゃないの。あっちの道を『シェンド』した『青い』サイだよ」……って言われてもなあ……なんとか聞き取った語を必死で分析。シェンドは「降りる」だから……あの坂の下になんかあるらしい。サイとはなんだ?

とりあえずバスターミナルの端にあるタクシー乗り場まで行って、教えられた坂道の方をうかがっていると、そばにいた浅黒いやせたおじさんが「タッシー? タッシー?」と聞いてくる。

どうも、客引きみたいなかんじだな、と警戒。今はタクシーよりバスなのよ。
「ノー、ノー、アウトブス・ペル・タオルミーナ」これ以上かかわってたらヤバいかも。ここは逃げるしかない、と坂道を降りていくことにした。そしたら、なんと、おじさんもついてくる! いやな予感。何かさかんに声をかけてくるが、全然わからないので無視。

20メートルほど行くと青い看板の出ている小さなバールみたいな店が開いていた。なにかパレルモの時と同じ雰囲気を感じて入ってみると、恰幅のいい、大きなおなかのおじさんが出てきた。
「タオルミーナ行きの時刻表ありますか?」

サイというのは大手のバス会社SAISのことだったのだ。行き先によってバス会社が違うらしい。
そこでわかったことは、タオルミーナに行くには、直行ではなくカターニャで乗り換えなければならないということ。アグリジェント発とカターニャからの、両方の時刻表をもらって、乗り継ぎを教えてもらう。
これでなんとか明日の予定が立ちそう。ついでにバスが同じターミナルから出発することを確認して、やきもきして待っているだろうリーメイさんのところに急いで戻った。

この間、さっきのおじさんは「よかったねえ」と言わんばかりに、にこにこしてくっついてくる。落ち着いて見ると、悪い人ではなさそうだ。はて、この人はこの辺の案内係なんだろうか? 



★オジサンは運転手
必要な情報を全て手に入れてうさこさんが戻ってきた。うさこさん、お手柄!
そこに突然、例のオジサンが「タッシー?」と割り込んできた。どうやらタクシーの運転手みたいだ。ホテルの名前を言うと7ユーロで行ってくれると言う。じゃあ、連れて行ってもらいましょうか。

オジサンの赤いワゴン車に荷物を載せてもらう。私のよりも一回り小さいのに、何故か私のよりも重いうさこさんのスーツケース。それを持ち上げた瞬間、オジサンよろける。   
おいおい、大丈夫かい?

タクシーでホテルに向かう途中、遺跡や博物館の脇を通るとオジサンがいろいろ説明してくれる。
シチリアのタクシー運転手は皆サービス精神旺盛だ。言葉が通じないと分かっていても、一生懸命伝えようとしてくれる。赤ら顔で人懐こくて憎めない人が多い。おしゃべりが大好きな彼らは、黙っているのが苦痛なんだろうな。

ホテルに着いて、チップも入れて8ユーロ払おうとすると、おじさんは手を振って「7ユーロでいい」と言う。なんて良心的なのかしら。パレルモの運転手はこのオジサンを見習って欲しいわ。



★ホテル『ヴィッラ・アテナ』
アグリジェントの宿は日本からネットで予約しておいた4つ星の『ヴィッラ・アテナ』。
うさこさんも私も、うにさんの旅行記を読んだ時から、アグリジェントに行くことがあれば絶対にここに泊まると決めていた。(『うにの旅日記』はこちら→)


門からホテルまでは結構な距離だ。広い敷地内にこじんまりしたホテルあって、控えめなエントランスの両脇に並んでいる熱帯植物の大きな鉢植えが、南国風の開放的な雰囲気を醸し出している。〔写真1、2〕

チェックインを済ませ、部屋を案内してくれるボーイさんの後に続く。このホテルにはエレベーターがない。拠って、このボーイさんは2階の私達の部屋まで階段で重い荷物を運ばなければならない。
特にうさこさんのスーツケースには俊輔への御土産がパンパンに詰め込まれているため、腰を破壊しかねない殺人的な重さである。「ふん!」と踏ん張りながら、真っ赤な顔で階段を上がっていくボーイさん。がんばってね〜。チップを弾むからね〜。

通されたツインルームは高い割にはとても小さい。スーツケースを広げるのがやっとの広さだ。
だけど、ボーイさんが窓を開けて得意げに指差した先を見た瞬間、部屋の狭さなど吹っ飛んでしまった。

キャーキャー!! 真ん前に神殿が見える! すご〜い!

十分に感激を表したつもりだったのに、ボーイさんは私達のリアクションに不満らしい。首を振りながら窓を閉めると、もう一度開けて「どうだー!」という風に両手を広げた。おもろい奴だ。
「ブラボー!」「ベッロ!」と、知っているイタリア語を駆使して大げさに喜ぶ私達。
今度は満足したらしく、うんうんと頷くボーイさん。チップを受け取ると笑顔で部屋から出て行った。

バスルームに入ってみたら、神殿を眺めるために壁をくり貫いて作った小さな覗き窓が付いている。
ステキ、ステキ、ステキーーー!! 小さくても、この部屋大好き!
さっそく本物の神殿を見に行こう!〔写真3〜5〕



★神殿に続く近道?
エントランスを出て右に行くと、神殿を眺めながら食事ができるテラス・レストランがある。
でも夏場しかオープンしないので、今回はここでは食事できない。

テラス・レストランの脇の階段を下りていくと、『不思議の国のアリス』の世界ような庭が広がっている。その奥にはプールがあるけど、夏ではないので水を張っていない。ああ、夏にもう一回来なくちゃ。でも夏は予約取るのが大変だろうな。

神殿は目の前にあるのだけど、いったん道路に出て、ぐるっと回って行かなければならない。
しかし、うさこさんはホテルの庭から林を抜けて神殿まで行ける近道があるという。どこかの個人サイトで情報を得たらしい。

では探しましょうと、庭の向こうに広がる林の草むらを掻き分けて探索開始。
だけど「もしかして、これかな?」と進む獣道(?)は全て行き止まり。
変だなぁ。近道は潰されちゃったのかしら。結局諦めて正攻法のルートで神殿の谷を目指すことになった。

ホテルの門の前には黄色地に黒でホテル名が書かれた看板が出ている。ちょっとこれは頂けないぞ〜。どっから見てもアメリカの安モーテルのサインみたいだ。もっとこのホテルに相応しい、シックでセンスのある看板に変えて欲しいな。〔写真6〜9〕



★神殿の谷
ホテルから徒歩10分弱で神殿の谷の駐車場に着いた。ここにはバールや土産物屋やアイスクリームを売るバンなどが集まっていて、多くの人々で賑わっている。この駐車場を挟んで神殿群は二手に分かれているのだが、まず左手(東側)にある神殿群から見ることにした。

チケットブースで入場料4.5ユーロを払い、緩やかな坂を上っていく。直ぐ右手にヘラクレス神殿があったのだけど、なぜか気付かずにそのままコンコルディア神殿へ向かう。
それぞれの神殿はゆったりとした遊歩道でつながれていて、道端にはオリーブの低木やマツやアーモンドの木が生えている。時々サボテンが生えていて、うさこさんはサボテンの実を探すのに熱心だ。
丘の中腹まで来ると左手に見晴らしのいい素晴らしい景色が開けてくる。緑の濃い平地の奥の高台には石造りの旧市街。まるで映画のシーンのようだ。

それにしても、ホテルを出たときは寒くて長袖のTシャツに薄手のセーター、その上にGジャンを着ていたのに、だんだんと暑くなってきた。とりあえずGジャンを脱いで腰に巻く。どんよりとしていた空もだんだん明るくなってきて、帽子を被ってこなかったことを後悔し始める。晴れちゃったらどうしよう……。

駐車場から10分くらいでコルコンディア神殿にたどり着いた。
紀元前425年頃に造られたというのに、ほぼ完璧に近い姿を留めている。これほどよく原型を留めているドーリアス式の神殿は、アテネのテセイオンとこのコルコンディア神殿しかないそうだ。
あまりの美しさ、あまりの大きさに、しばし言葉を忘れて見惚れる。そして思い出したように写真を取り捲る。ほんと絵になる神殿だわ。

さて、神殿の谷の東端にあるヘラ神殿を目指すとしよう。
しかし、暑い。とにかく、暑い。我慢できずにセーターも脱ぐ。
太陽が出てきて、肌をジリジリと焼きつける。ホテルを出るときは震えるくらい寒かったのに、いきなり真夏並みの日差しの強さ。この極端な寒暖差は何なんだ!

日焼けで肌をボロボロにしたくないので、うさこさんの晴雨兼用の日傘をお借りする。
やっと日陰が出来たよ〜。だけど、私を見てクスクス笑うイタリア人が多いのは何故? 向こうの人は日傘を差さないのかしら? 
でも、笑われても気にしませんわ! 見てくれよりも、お肌を守る方が大事よ!

どうでもいいけど、コルコンディア神殿とヘラ神殿に関しては、“神殿の谷”ではなく“神殿の丘”である。
ああ、しんどい。やっとのことで丘の頂上にあるヘラ神殿に到達。滝のような汗をかき、喉はからから。
でもそこには、登ってきた甲斐のある素晴らしいパノラマが待っていた。

カルタゴ軍の攻撃と中世の大地震で、34本あったうち25本の柱と軒回りの一部しか残っていないヘラ神殿。その向こうには、他の遺跡群とアグリジェントの街並みが広がっている。絶景かな、絶景かな! 弁慶がここにいたら、そう言ったに違いない。

来た道を戻って、入り口近くのヘラクレス神殿を目指す。今度は下り坂なので少しは楽だ。
途中で可愛らしい野良犬が私達を追い越していく。ここにはたくさんの野良くん達が住み着いているようだ。デジカメを持って野良くんを追いかけ回す元気なうさこさん。しかし、ようやくヘラクレス神殿まで来た頃には二人とも膝がガクガク笑っていた。

もう限界だ〜! これ以上歩けな〜い!

そこここにゴロゴロ転がっている巨大な石の上に腰掛け、虚ろな目でヘラクレス神殿を見上げる。
この神殿は紀元前520年の建造で、神殿の谷の中で最も古い。中世の大地震で倒壊したのだが、元の石材を積みなおして8本の柱だけが再建されたそうだ。一列に並んだ8本の柱が天に突き刺さるようにそびえ立っている。この絵、結構好きかも。

ヘラクレス神殿の横には、昔、石材を運ぶために作られた轍(わだち)の跡が残っている。人海戦術だけでこんな巨大な神殿を作り上げた古代の人たち。いったいどれだけの年月を費やしたんだろう……。〔写真10〜15〕


雲が少し出てきて日差しが弱まってきた。汗も引っ込んだことだし、そろそろ次の神殿に行くとしよう。
駐車場に戻ってジェラートを買い、ペロペロなめながら西側の神殿群に歩いていく。まずはジュピター神殿だ。

でも……あれ? 神殿はどこですか???

目の前にあるのは石材が転がる広大な廃墟。わずかに神殿の基盤のみが残っている。
紀元前480年に僭主テロンが造り始めたこの神殿は、あまりにも規模が大き過ぎたために未完の状態でカルタゴの攻撃を受け、その後の大地震で倒壊。更には18世紀に港を作るための材料として石材がどんどん運び出されたために、このような廃墟と化したそうだ。神殿があった当時、石壁の窪みに立って軒まわりを支えていた人像柱のテラモーネ(テラモンとも言う)のレプリカが、地面の上に無造作に横たわっている。なんだかちょっと物悲しい……。

テラモーネの更に先へと進んでいくと、4本の柱と軒まわりの一部が残っているだけの小さな神殿跡があった。これはカストール・ポルックス神殿で、西側の神殿群の中で唯一神殿らしい姿を留めている。
「一応撮っとく?」と一枚だけ写真に収め、これにて全ての神殿見学は終了。ふぅ。足腰が丈夫じゃないと、ここの見学は辛い。神殿の谷には元気なうちに訪れましょう。〔写真16〜18〕



★突然の暴風雨
いきなり涼しくなってきたので、脱いだセーターをまた着る。雲行きが怪しい。早く帰らなくちゃ。歩みを速めたけど、とうとう雨が降り出した。みんな慌てて走り出す。

ふっふっふ。私達には傘があるんだもんね。さっき私を笑った奴ら、ざまあ見ろ〜!

と、優越感に浸ったのはほんの一瞬。うさこさんとの相合傘では、腰から下がずぶ濡れになってしまうくらいの横なぶりの降り方だ。とりあえず大木の下に避難する。通り雨だから直ぐに止むだろうと高を括っていたが、雨脚は強まる一方で止む気配はまったくない。それどころか、風がビュンビュン吹き抜けて天気は大荒れに・・・。

いや〜ん、嵐だわ〜。どうしよ〜。

気温がどんどん下がってきたので、腰に巻いていたGジャンを着てボタンを締める。
も〜! なんなんだよ〜! 脱いだり、着たり、忙しいなあ!!

これ以上雨宿りをしていても風邪を引くだけなので、がんばって駐車場にあるバールまで歩こうと話し合う。傘で頭だけは隠れるけど、それ以外の場所には容赦なく雨が降りかかってくる。冷たいよ〜。

小走りでバール前の屋根付テラスに駆け込み、ハンドタオルで濡れた体とバッグを拭く。次から次へと人が駆け込んできて、テラスは満員御礼だ。
ふと通りに目を向けると、目の前の道路は鉄砲水みたいな濁流が轟々と流れている。……ほとんど川じゃん、これ。私達、ホテルに帰れるのかしら? 青くなる、うさこさんと私。

冷え切った体を温めるために店内に入り、奥のバール(手前は土産物コーナー)でカプチーノを注文。
小さなテーブル席に座って気長に雨が止むのを待つ。好奇心一杯の眼差しで話しかけてくるオジサン達を相手にすること約30分。ようやく雨が弱くなってきたので、オジサン達に別れを告げてバールを出た。
川のようだった道路もかなり回復している。相合傘で体を寄せ合って歩きながら、なんとか無事ホテルに到着。はぁぁぁぁ、疲れたよ〜。足が棒のようだ。


写真はこちら→


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