南イタリア遠征記
〜グランブルーの青い海と俊輔に逢いたくて〜

☆レッジョ編☆第一日目☆1



★俊輔に伝えたかったこと
タオルミーナからメッシーナへの道中は美しい海辺の風景の連続だった。うさこさんと歓声を上げながら、窓の外の景色にうっとり。しかし、海に見とれてばかりもいられない。私は俊輔への手紙の文面を考えなければいけないのだ。私の意識は青い海と俊輔への手紙との間を行ったり来たりした。

今の俊輔には、なにを伝えてあげるのが一番いいんだろう・・・。
自分の経験を踏まえ、手紙上で「外国人とのコミュニケーションの取り方(特に自分の意見を押し通す方法)」をレクチャーすることも考えた。私が俊輔に教えてあげられることがあるとしたら、多分これくらいだし・・・。
差し入れするために持参した和食の目録を作って、食物学的なアドバイスをすることも考えた。一応大学でちょっとだけ食物学をかじっているし・・・。
でも、なんか違う。なんかズレてる気がした。私自身が本当に伝えたいことはなに?
ああでもないこうでもないと自問自答を繰り返し、最後に自分はこういうことが言いたかったのだという結論に達した。

良い時もあれば悪い時もあるさ。俊輔は今まで何度も壁を乗り越えてきたんだから大丈夫。
焦らなくていいんだよ。ずっと待っているよ。俊輔のサッカーに対する情熱がなくならない限り、いつまでも俊輔を見守っていくから。だから負けないで・・・。

うん、これでいい。これに肉付けして1枚の手紙にすれば十分だ。余計なことは一切省こう。
今の泥沼から早く抜け出そうと必死にもがいているであろう俊輔を楽にしてあげられるといいな。ファンは結構気が長いんだよって伝えてあげることで、俊輔がほんのちょっとでも安心できるといいな・・・。

そして、そう、主語にも気をつけなくちゃ。“いつまでも見守っていく”のは「私」ではなく「私たちファン」だ。レッジョに来たくても来ることが出来ない、たくさんの俊輔ファンの気持ちを預かってきたのだもの。みんなの俊輔を想う気持ちを余すことなく手紙に込めないと。俊輔だって私一人がそう思っていると書くよりも、多くのファンがそう思っていると書いてあった方が嬉しいに違いない。
肉付け部分も頭の中であれこれ組み立てる。よし、後はレッジョのホテルで清書をするだけだ。書くことが決まってスッキリしたので、再び窓の向こうに広がる紺碧の海に意識を戻した。



★突然のバス交代
メッシーナまでの行程を半分以上来たところで、停留所でもないのにバスが突然止まった。ドライバーがイタリア語で何かを告げると、乗客はぞろぞろと降りていく。
「なになに?いったい何が起こっているの?」呆気に取られるうさこさんと私。
バスを降りた乗客たちは、すぐ近くに停まっている別のバスに乗り込んでいる。程なく全員乗り込み完了。車内に残っているのは私たちだけだ。

まさかメッシーナに着いたわけじゃないよね?
バスターミナルが近くにあるわけじゃないし、ここってただの道端なんですけど???
ちょっと運転手さん!明らかに事態が飲み込めていない外国人の私たちに、なにか説明ぐらいしてくれてもいいんじゃありません?

うさこさんが「ここはメッシーナですか?」とドライバーに聞くと、もう一つのバスを指差した。どうやら、あっちへ乗り換えろということらしい。途中でバスを乗り換えるだなんて、そんな話聞いてないぞ!
慌ててバスを降り、バス胴体にある荷物入れの扉を開け、スーツケースを引きずり出す。
「待ってーーーー!置いていかないでーーー!!!」
日本語なんて通じるわけがないんだけど叫ばずにはいられない。もう一つのバスに駆け寄り「乗るから待って!」とジェスチャーで知らせ、スーツケースをこっちのバスの胴体部分に押し込む。焦っていて気付かなかったのだが、このときスーツケースを足にぶつけまくっていたらしい。翌日脛にあざがたくさん出来ていた。(泣)

ぜいぜいしながらバスに乗り込み、座席に体を沈める。心臓がバクバクいっている。
ああ、なんとか間に合ったよ〜。置いていかれなくて良かったよ〜。
ふとバッグを見ると、どす黒い油汚れがこびりついている。いや〜ん、ショック!!!
スーツケースを出し入れするときにバスの油が付いてしまったに違いない。レッジョのホテルに着いたら、すぐに染み抜きしなくちゃ。
この時はバッグのことばかりに気を取られていて、元のバスに大事なものを置き忘れていることに気付かなかった。



★何もない街メッシーナ
30分弱でバスはメッシーナの街中に入った。もうすぐ到着だ〜!と喜んだけど、ここからが長かった。渋滞の凄いこと凄いこと!少し進んではブレーキを踏み、また少し進んではブレーキを踏み。その度にバスの車体が前後にガクガク揺れる。ヤバイぞ。気持ち悪くなってきたぞ。

実は、私は乗り物全般が苦手だ。自分で運転するようになってから自動車には酔わなくなってきたが、バスは時々酔ってしまう。飛行機も今までに何度も酔った。天候が悪くて機体が揺れたり、一度で着陸できずに何度も旋回したりするともう駄目。飛行機は窓を開けて外の空気に当たるという奥の手が使えないので辛い。船も当然苦手だ。これからレッジョ行きのフェリーに乗るというのに、今から乗り物酔いしていて大丈夫なんだろうか、私。

窓の外の景色が美しかったりすれば気も紛れるんだろうけど、今までの都市で見てきた石造りの情緒ある古い街並みとはちょっと違う。メッシーナはコンクリートの建物が多くて無機質な印象を受ける。良くいえば近代的なんだけどね・・・。

この時はまだヤナギの移籍話は影も形もなかった。今行けば「ヤナギサーワ!」とか「ヤナ!」とメッシーナの民に声を掛けられて熱烈歓迎されちゃうのかしら。何もなさそうな町だけど、ヤナギはずっと鹿島にいたわけだから、何もないことには慣れているか。1時間ちょっとのドライブでタオルミーナへ行けるし、すぐ近くには仲良しの俊輔もいるし、ヤナギにとっては最高の環境かもしれない。



★レッジョへ行く船
大幅に到着予定時間をオーバーしてようやくメッシーナに到着。バスターミナルはイタリア鉄道メッシーナ駅前広場の外れにあった。
バス酔いでフラフラするが、外に出るといくぶん気分が回復。スーツケースを引きずりながらフェリー乗り場を探し始めるが、これがなかなか見つからない。近くに同じバスに乗っていた欧米人夫婦がいたので、旦那様の方にフェリー乗り場を尋ねてみた。イタリア語で「フェリーどこ?」と聞いたのだけど、首を傾げるだけで返事なし。ああ、私のイタリア語はやっぱり通じないんだわ、、、と凹んでいたら、“What do you want?”と聞いてきた。やった!英語圏の国の人だ!思わず心の中でバンザイをする。

今度は英語でフェリー乗り場を尋ねると、イタリア語の話せる奥様が駅の中まで入って行って乗り場を聞いてきてくれた。ありがたや〜。ご夫婦に何度もお礼を言って乗り場を目指した。

その前に、まず駅構内にあるフェリーのチケット売り場に寄らねば。例によって購入担当はうさこさんで私は荷物番。
フェリーの行き先は、「レッジョ」と「サンジョバンニ」の2種類ある。サンジョバンニはレッジョより少し北の駅で、ローマ方面への乗り継ぎには便利だが、レッジョに行くのには下手をすると1時間以上遠回りになるので、購入の際は間違えないようにしなければいけない。レッジョ行きの高速フェリーは1時間に1〜2本出ており、チケットは2.80ユーロ。レッジョまでの所要時間は約25分だ。

購入したチケットを手に乗り場を目指す。しばらくスーツケースをガラガラと引きずっていくと、想像していたよりも大きな港にたどり着いた。とりあえず右手の船のところに行ってみる。大きなバスも乗り込めそうなカーフェリー。
うさこさんが係の人と思しき人にチケットを見せて聞くと、「これはサンジョバンニ行きだから、あっちの青い船に行きなさい」と言う。言われてみると、左手にも岸壁が伸びていて、いくつか船も停泊中。柵沿いに歩いて行くと、こちらは、さっきのよりかなり小さな船。ちょうど柵が途切れたところに、作業中のお兄さんたちがたまっていたので、うさこさんがまたまたチケットを見せて「レッジョへ行くのはどれ?」と聞いてみる。

最初に教えてくれたお兄ちゃんは「違う、違う、レッジョへ行くのはずっとあっちだ」とさっき断られた船を指差す。
「そうじゃないの、あれはサンジョバンニ行きだから。あたしたちはレッジョへ行くの」必死で食い下がるうさこさん。その場のみんなでひとしきり大騒ぎした挙げ句、一番ガタイのいいあんちゃんが「おお、そうだ、このチケットはサンジョバンニじゃなくて、レッジョだよ〜。あっちのやつだ〜」という感じで「あれ、あれ」と指差してくれた。
「グラッッツェ〜」やっと正しい乗り場が分かったよ。

出港まで30分ほど時間があったので、うさこさんがフェリーの中で食べるお昼御飯を買いに行ってくれることになった。実は私にはどうしても食べたいものがあった。それはアランチーニという南イタリア名物のお米のコロッケ。中身はミートソース風味でチーズを詰めたものや、サフラン風味でグリーンピースを詰めたものなどが一般的らしい。「フェリーに乗る前にアランチーニを買って船上で食べよう!」と某ガイドブックに書いてあったので、単純な私はそれを実践したくてたまらなかったのだ。

スーツケースの上に腰掛けて荷物番をしながらうさこさんの戻りを待っていると、急に日差しが強くなってきた。帽子を被らなくちゃと思った瞬間、ハッとして凍りついた。
そういえば私、帽子を持っていない!どうして?どうして帽子を持っていないの?!
そして、はたと思い当たった。そうだ、あのバスだ。急いで乗り換えたから帽子を座席に置き忘れてきちゃったんだ。パレルモのピッツェリアではかわいい女の子が持っていてくれたけど、今度は出てこないだろうな・・・。あの帽子、大好きだったのに・・・。お気に入りの帽子を無くして一気に落ち込む私であった。

レッジョ行きのフェリーの乗船が始まった。ほどなく出来立てホカホカのアランチーニを抱えたうさこさんが戻ってきたので乗船。最前列右端に空席を発見し、目の前の壁際にスーツケースを並べて置いて席に着いた。ここは3人掛けシート。私が通路側、うさこさんが真ん中、一番奥の窓際の席には若い軍人さんが座った。この軍人さん、レッジョに着くまでの約25分の間、まるで石像のようにほとんど動かなかった。

さっそくアランチーニを袋から取り出し、食べ始めるうさこさん。湯気が立ってて美味しそう。いい匂いが漂ってくる。
「リーメイさん、温かいうちにいただきましょうよ」
うさこさんが勧めてくれるのだけど、私はまだバス酔いを引きずっていた。しかも今はもっとも苦手な船に乗っているのである。何か食べると余計に気分が悪くなりそうな気がする。ううう。せっかく買ってきてくれたのに、うさこさん、ごめんなさい。レッジョのホテルに着いてからいただきます。え〜ん、早くレッジョに着いてくれ〜。もう乗り物は嫌だ〜。



★レッジョのお抱え運転手
フェリーがレッジョに到着した。ついにレッジョ上陸だー!
レッジョの港はメッシーナの港よりも規模が小さかったと思うのだけど、実はあまり良く覚えていない。人の波に続いて歩いていくと、港の外れにあるタクシー乗り場にたどり着いた。私たちが乗ることになったタクシーの運転手は、おばちゃんとおばあちゃんの境目くらいの女性。身長155cm以下。ぎすぎすにやせ細った体。かなり水分の不足しているお肌。への字に曲がった口元。客を前にしても恐ろしく愛想がない。うーん、手強そうだ。

トランクを開けてもらってスーツケースを入れようと思ったら、「あんたたちは引っ込んでなさい」といわんばかりに、強引にうさこさんのスーツケースを奪った。例の男性の腰をも破壊しかねない超重量級スーツケースだ。
「あ、それ本当に重いから!」うさこさんが慌てて手を貸そうとしたが頑として聞き入れず、腕と脚と首に青筋を立てながら一人で持ち上げてしまった。お見事。しかし、相当に頑固だわね。
私のスーツケースは大きくてトランクに入らなかったので助手席に突っ込む。荷物を積んだ後は車体に手をついて少しぜいぜいしていたけど、呼吸が整うと片方の口の端をちょこっと持ち上げてニヤリと笑った。
この人あんがいカワイイかも。客には絶対に荷物を持たせないという彼女のプロ根性とその怪力に敬意を表し、「おばあちゃん」ではなく「おばちゃん」と呼ぶことにしよう。

このおばちゃんドライバー、今まで出会ってきた南イタリアの男性ドライバー同様、いや、それ以上に運転が荒い。クラクションをバンバン鳴らしながら、窓の外に向かって怒声を飛ばす。いや〜、気の強いこと強いこと・・・。

ミラマーレのエントランスに車を着けると、またしても筋張った腕をプルプルさせながらスーツケースを車から降ろす。港からホテルまではチップを入れて16ユーロ。後にこのおばちゃんが私たちのお抱え運転手になろうとは、うさこさんも私も予想だにしなかった。



★ホテル・ミラマーレ
ミラマーレ(Grand Albergo Miramare)は俊輔がイタリアに移籍したての頃、しばらく滞在していた4ツ星ホテルだ。フロントのお姉ちゃんに予約してないけどシングルルームを二つ取れるか尋ねる。ついでに海が見える部屋をリクエスト。(うっかりしていてバスタブ付きをリクエストするのは忘れた)。幸いチェックアウト予定日の4月27日までオーシャンビュー(オーシャンフロントではない)の部屋が2つ取れるという。良かった、良かった。

このフロントのお姉ちゃんは見覚えがあるぞ。長いウェービーな髪にハスキーな声。確か移籍当初にテレビで俊輔についてコメントを出していたはず。さばさばしたというか、大雑把というか、かなり豪快な性格のため、後にうさこさんが「がらっぱち姉ちゃん」と命名。うさこさん、ナイスネーミング!

がらっぱち姉ちゃんが呼んだボーイさんは何故か私服だった。ブルージーンをはいたボーイさんと一緒にエレベーターに乗り、それぞれの部屋に案内してもらう。うさこさんと私の部屋は、またしても同じフロア(2階)の両端状態でえらい遠かった。タオルミーナのホテルとは規模が全然違うので遠さも半端じゃない。ま、いいけどさ。

今回のうさこさんの部屋は広いダブルルームだった。タオルミーナの部屋よりは少し小さいけど。私の部屋はといえば、使うはずだった部屋の掃除が済んでいなかったため、急遽その隣の部屋を宛がわれた。それは、なんとセミダブルベッドが3つ並んだトリプルルーム!
ひょえ〜。こんな無駄に広い部屋を一人で使っていいの?追加料金取られないよね?
当然そんなことはされなかったけど、しょうもないことが心配になる貧乏性の私であった。

蛇足だけど、ブルージーンのボーイさんは、めちゃくちゃカワユイ男の子だった。「ジャポネーゼ?」「ナカムーラ(を見に来たの)?」と人なつこい笑顔で話しかけてくる。こんなにカワユイ男の子に話しかけられているのに「Si(はい)」としか答えられない自分が悲しい。やっぱりイタリア語を勉強しなくちゃ(動機が不純)。

チップを受け取り「チャオー」と手を振りながら部屋から出て行ったボーイさんは、その1分後、ホテルのエントランスから走り出ていくのが窓から見えた。どうやら、ちょうど仕事が終わって帰るところだったのに、がらっぱち姉ちゃんに私らの案内を頼まれちゃったみたいだ。だから私服だったのね。時間外だったのに、にこやかに対応してくれてありがとう。また会えるかな〜と期待していたのだけど、4日も滞在したのに2度と会えなかった。残念。



★俊輔に会いに行くのだ!
ホテルの部屋で最初にしたこと。それはバッグに付いた例の油汚れを落とすこと。洗面台にお湯を張り、石鹸でゴシゴシこすったらキレイに落ちた。うれしい!
それからスーツケースに一緒くたに詰め込んであった、俊輔への差し入れとJへの差し入れを分類した。これでかなりスーツケースが軽くなるぞ!

俊輔への差し入れは、レトルトの鰻の蒲焼(海外駐在員の人気ナンバーワン)、えびすめの塩昆布(関西出身の海外駐在員に大人気)、インスタントの味噌汁、ふりかけ(ゴマ塩とシソの2種類)、そして一番大事な(?)ペヤングソースヤキソバ。それらをきれいな赤い紙袋に丁寧に詰め込む。

Jへの差し入れは、サッポロ一番みそラーメン&塩ラーメン、柿の種、スルメ、裂きイカ、インスタントの味噌汁、かりかり梅、あとは奮発して俊輔と同じえびすめの塩昆布。前5つはJ本人からのリクエスト。恋しくてたまらない日本の食べ物の筆頭がサッポロ一番みそラーメンって、どうなのよ、J。こっちはスーパーのビニール袋に適当に詰め込む。

ああ、そうだ。それよりも俊輔への手紙を清書しなくちゃ。机に座ってペンを持ったけど、お腹が空いていることを思い出し、フェリーで食べなかったアランチーニを袋から出す。外側は冷めてしまったけど、中身は少しだけ温かかった。おいひぃ〜♪出来立てはもっと美味しかったんだろうなあ。のん気に食べていたら「リーメイさん、そろそろ出かけないと練習が始まっちゃいますよ」と、うさこさんから電話が。もう2時半だ!
きゃあ、ごめんなさい。まだ清書が終わっていません!

15分の猶予をもらい、今度こそ本気で清書を始める。自分で言うのもなんだが、私は字がきれいな方だ。子どもの頃、硬筆展では必ず金賞をもらっていた。だけどこの時は気が焦っていて、全然きれいな字を書けなかった。書き直す時間はないし、もう読めればいいや!
開き直って書き上げると、4つに折りたたんで和食を入れた紙袋の中にそっと忍ばせた。

うさこさんの部屋に準備完了の電話をかけ、慌ててロビーに降りて行き、フロントでタクシーを呼んでもらう。5分程度で現れたのは、なんとさっきのおばちゃんだった。お互いに苦笑い。
「サンタガタまで!」(実際にはサンターガタと発音しないと通じない)
おばちゃんは「はいはい、サンタガタね。わかってるよ」という感じ。レッジーナのサンタガタ練習場までタクシーを利用する日本人、すごく多いんだろうなあ。



★サンタガタ練習場
10分くらい走っていただろうか。おばちゃんドライバーがタクシーを止めて窓の外を指差した。白いペンキ(漆喰?)で塗り固められた塀の上には、レッジーナのシンボルマーク(サッカーボールと「R」の文字を模ったやつ)とREGGINA CALCIO“CENTRO SPORTIVO S. AGATA”の文字が描かれた看板が立っている。おお!テレビや雑誌で何度も見たサンタガタ練習場の入り口だ!遂にやってきたぞ!

うさこさんがおばちゃんに練習が終わる頃に迎えに来て欲しいと告げる。料金は帰りに往復分まとめて30ユーロ払えばいいそうだ。うさこさんに自分の名刺を渡すと、おばちゃんは車を出した。これで帰りの足は無事確保。安心して練習を見学できるぞ。

門を入ってまっすぐに進んでいくと、開けたスペースに出る。正面にオフィスとオフィシャル・ショップ、駐車スペースがあって、左手にサッカーグラウンドが3面並んでいる。一番手前のグラウンドでは子供たちのサッカー教室をやっているらしく、大勢のギャラリーで賑わっていた。

その前を通り過ぎ、ずんずん奥へ進んでいく。いま歩いているグラウンドの脇の道は選手たちの駐車場へと続いていて、車2台がやっとすれ違える程度の広さだ。車道の左側は背の高い緑の生垣、右側は歩道になっている。歩道の向こう側はグラウンド。歩道とグラウンドの間は金網で仕切られていて、歩道上に等間隔に植えられた木が小さな、そして貴重な日陰を作っている。

一番奥のグラウンドに到達すると、これまた何度もテレビで見た光景が待ち受けていた。まるでオランウータンのように金網にぶら下がって、食い入るように練習を見つめているレッジーニ(レッジーナのサポーター)たち。今日は平日だというのに、いい年をした男どもが隙間なく金網にしがみついている。

あの〜すみませんが、私とうさこさんのために少し場所を空けてくださいな。。。
控えめに金網に近づくと、「あ、ジャポネーゼだ」という感じで左右にちょっとずつ詰めてくれた。どうもどうも。本当は日陰を確保したかったけど贅沢いえないよね。

金網越しに見えるのは、これまたテレビでお馴染みの高い石の塀に囲まれた練習場。まるで刑務所みたいだ。そして、正面の塀の前には俊輔の大好きな黄色いベンケイ。今日もこれを使って居残り練習するのかな?

既にレッジーナの練習は始まっていた。さっそく目を皿のようにして俊輔を探す。
いたーーー! 俊輔見つけたーーー! 本物だーーー!(←あたりまえ)

日陰の全くない眩しい緑のピッチで、茶色い髪をなびかせて走っている俊輔。こんなに暑いのに、なぜか長袖を着ている。うさこさんはビデオカメラを出して撮影開始。その時、ふと視線を奥の方のギャラリーに目を向けると、20代半ばくらいの日本人女性が二人いた。向こうも金網から手を離してこちらをじっと見ている。わーい、お仲間だ。あとで挨拶に行かなくちゃ。



★紅白戦
今日は木曜日なので紅白戦のある日だ。しばらくすると選手たちにビブスが配られた。俊輔はビブス組。モザルトもビブス組。コッツァはビブス無し。ということは、俊輔は控え組なのかなあ・・・。くそーーー!カモレーゼのバカヤローーー!

憎きカモレーゼの姿が見えたので、AQUARIUS掲示板仲間との約束を果たすことに。

♪でーぶ、でーぶ、百貫でーぶ、おまえのかーちゃん、でーべそ♪

隣でうさこさんがビデオカメラを手に笑い転げている。まさか本当に歌うとは思わなかったと言われてしまった。私は有言実行型なんだい! 俊輔、敵は取ったぞ!(←これが敵討ちになるのか?それに明らかにカモレーゼの耳には届いていないぞ)

紅白戦はかなり激しかった。練習なのに本気で削りにいくレッジーナの選手たち。削られた選手が声を上げてうずくまるたびに、見学しているレッジーニたちが頭を抱えて心配そうにピッチを見やる。おいおい。練習で怪我したら意味ないじゃん・・・。

肝心の俊輔は、元気がないように見えた。あまりボールに絡んでないし、全然声が出ていない。
「ナカ、ナカ、ナカ!」と俊輔を呼ぶチームメイトの声は聞こえるけど、俊輔の声は一度も聞こえなかった。もっと声を出して要求しなくちゃ駄目だよ・・・。約1時間の紅白戦を通して見て、大人しい俊輔にちょっと心配になった私たちだった。



★レイコちゃんとFさん
さっき目の合った日本人女性二人が「あの、日本人ですか?」と話しかけてきた。
一人はFさん。仕事を辞めたので、思い切ってレッジョにきたそうだ。
もう一人はレイコちゃん。レイコちゃんも現在は無職。二人とも一人旅だけど、こっちに来てから知り合って行動を共にしているとのこと。レイコちゃんは4月9日からレッジョに滞在していて、まだしばらくレッジョにいるらしい。毎日のように俊輔を見ているなんて、うらやましい!

彼女たちも日曜日のパルマ戦を観戦予定だが、まだチケットは買っておらず、売り場も発見できていないという。あれ?ここのショップで買えるはずだよ。うさこさんが持っていた「欧州サッカー観戦ガイド」(サッカー版「地球の歩き方」)にそう書いてあるぞ。しかし、この情報は古いらしく、今はサンタガタのショップでは売っていないそうだ。

更にレイコちゃんから衝撃の事実を伝えられる。なんと、オフィシャルショップに泥棒が入り、それ以来ショップは閉めたきりだそうだ。な、な、なんですと!レッジョの御土産に俊輔のユニを始め、レッジーナのオフィシャルグッズを大量に買う予定だったのに、いったいどうしてくれるんだ?!これじゃジャパンマネーの落とし所がないではないか!
追い討ちをかけるように、街中のインフォメーションセンターも全く機能していないと教えられる。なんだか先行き不安だなあ。



<うさこのルックアップ> 私、実は水沼ファンでした!その1
練習終了後、今日はやけに報道陣が多いな、とクラブハウスへの通用門から首を突っ込んで中をのぞいてみると、インタビュー室の外の縁石に腰掛けているのはなんと水沼氏!
あまりに自然だったので、思わず「あれ〜?こんにちは〜」と声をかけてしまう。水沼さんも別におどろいた様子もなく「や!」という感じで、笑顔でうなずいてくれた。続けて「取材ですかあ」と聞いてしまうこのノリはいったいなんなの?

実を言いますと私、俊輔ファン歴より水沼ファン歴の方が長いのです。Jリーグ発足当時、井原さんにぞっこんだった私はマリノスの試合は欠かさず見てました。
そこですごく惹かれてしまったのが、ベテランMF水沼さんのプレー。代表時代も、全盛期も見てはいないのですが、背番号8の渋いシュートはほんと好きでした。忘れられないのは、雨の試合で決めた、ピッチコンディションを見極めたグラウンダーのシュート。
だから、水沼さんが俊輔をかわいがってくれるのはうれしくてしょうがない。今回も、心配してきてくれたにちがいない水沼さんの出現は、涙が出るほど感動だった。

そのうちに、なにやらグラウンドの方が騒がしくなってきた。残っていた数人の選手と数人のスタッフが集まってきて、さらに水沼さんもグラウンドに降りて行く。行く手には突如黄色いものが出現!!
「バナナだあ!!」「バナキン!?」とリーメイさんと顔を見合わす。やったあ、ラッキーかも。
レイコちゃんたちが水沼さんに放送日を聞いているのに便乗して、私も「俊輔も蹴るんですかあ」と聞いてしまう。
「うん、最近元気ないからねえ。元気づけようと思ってねえ」ううー、なんというやさしさ。
「わ〜、よかったあ。そうですよねえ」と思わず飛び跳ねて喜んでしまう。相変わらずレッジョでは子供な私。

水沼さん、テレビのままの気さくな方で、すっごくいい人でした。こっちも気楽に、美帆ちゃんと同じ調子で話しかけちゃえるくらい。どうやって、俊輔を元気づけようかと思案してやってきた私たちだったが、水沼さんが来てくれたんならきっと俊輔も元気になるに違いない。私たちは用無し??(汗)(その2に続く)



★巨大バナナに驚くレッジーニ
TBS取材班がピッチに入っていき、右側のゴールの前で巨大バナナのセットを始めると、レッジーニたちの間からもどよめきが起こった。

「あれは何だ?!」
シルクの白いシャツに黒サングラスをかけた伊達男(ここには場違いなオシャレさん)が片言の英語で話しかけてきた。近くにいたむさ苦しい野郎どもも集まってきて期待に満ちた目を私に向ける。
「バナナ」
ぶっきらぼうに答える私に「バナナは分かっている!」と伊達男はキレ気味になる。
でもさあ、バナキンの説明は日本語でも難しいぞ。片言の英語しか話さないお兄さん達に理解できるのかしら?

「ええと、フリーキックを蹴って、バナナに当てないようにゴールに入れるの。ボールを一番大きくカーブさせた人が勝ちだよ」
なるべく簡単な英語を使って、身振り手振りで一生懸命説明する私。しかし、私の英語が拙いのか、奴らの英語の理解力が足りないのか、明らかに全員が困惑の色を浮かべている。

やっぱり分からないか・・・。どうやって説明すればいいんだろう・・・。
人が懸命に無い知恵を振り絞っているというのに、奴らは早々に諦めて「オーケー、オーケー」と言いながらピッチに視線を戻してしまった。

「おい!なにも分かっていないくせに、何がオーケーなのか言ってみろ、こら!!」
自分の語学力のなさを棚に上げて逆切れするリーメイであった。




NEXT  INDEX




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送