南イタリア遠征記
〜グランブルーの青い海と俊輔に逢いたくて〜

☆レッジョ編☆第一日目☆2



★バナナキングinレッジョ
バナナのセッティングが終わると、挑戦する選手たちがピッチに再登場。挑戦者はモザルト、コッツァ、ディミケーレ。そして最後に俊輔が両手にスパイクを持って、靴下のままピッチに戻ってきた。

通訳を介してイタリア人選手たちにルールを説明する水沼さん。その時、俊輔に電話がかかってきたらしく、レッジーナの男性スタッフが携帯を手に現れて俊輔に差し出した。テクテクとスタッフに近づき、嬉しそうに電話を受け取る俊輔。相手は誰かな?

この日スーツを着たレッジーナのスタッフは二人いたけれど、この二人に俊輔はよくなついていた。そう「なついていた」のである。そうとしか言いようがない。だって俊輔は、まるで子犬のようにスタッフにじゃれついていたから。喉もとに空手チョップを入れたり、肩に寄りかかったり、後から突っついたり。スタッフの方も俊輔にちょっかい出されて嬉しそう。この日はそんな光景を何度も目撃した。スタッフとは上手くやっていて、みんなに可愛がられているんだね、俊輔。

電話が終わった俊輔は、他の選手たちに直接アドバイスを与え始めた。ちゃんとイタリア語でコミュニケーションを取っているみたいだ。いいぞ、いいぞ。特にディミケーレは俊輔の言葉に熱心に耳を傾け、あれこれ質問攻めにしている。お〜、やる気満々みたいだ。
この日はとても風が強かったので、黒いスーツを着たTBSのスタッフが、ずっとバナナを後から支えていた。そうしないと倒れてしまうのだ。いやはや、ご苦労様です。

まず一人目の挑戦者は、俊輔の親友モザルト。通称モザ。
なんと一本目(10バナナ)はすんなりと入ってしまい、ブラボー!という歓声が上がる。そのモザの背中に笑いながらボールをぶつける俊輔。

その次は外してしまったモザ。何故か「ナカーーーー!」と叫びながら俊輔に襲い掛かる。この二人は本当に仲が良い。
モザルトの記録は結局10バナナだったけど、蹴るたびに水沼さんと固く握手するのが面白かった。ノリが良くて楽しい奴だ。

次はおちびさんディミケーレ。俊輔はディミと呼んでいるらしいが、私は勝手にミケたんと呼んでいる。猫みたいでカワイイでしょ?
蹴るたびにふざけていたモザと違って、こいつは真剣そのもの。記録はモザを上回る15バナナ。上機嫌で水沼さんと握手を交わし、90度の深いお辞儀をしたミケたん。案外礼儀正しい奴なのかも?
ミケが挑戦しているあいだ、俊輔は奴が外したボールを甲斐甲斐しく拾い集めていた。ボール拾いしている間も俊輔の口元から微笑が消えることはない。とっても楽しそう。

3人目は我らが俊輔。
まずは2本目で10バナナをクリアーして、ブラボー!の大歓声。自分の番が終わってすっかりリラックスしているモザとミケが、二人しておちゃらけて場を盛り上げている。
何本目か忘れたが、俊輔が蹴ろうとした瞬間、なんとミケたんは俊輔の写真を撮るために芝の上に這いつくばっていたカメラマンの背中の上に突然覆いかぶさった。気をそらされてボールを大きく外す俊輔。背中に乗られたカメラマンもビックリ。おいおいミケたん、俊輔の邪魔をしないでくれよ〜。しかし笑える。面白い!面白すぎるぞ!!ほんと、お茶目で憎めないキャラだわ。

俊輔が20バナナをクリアーすると、伊達男が拍手しながら私に向かってにっこり微笑んだ。
「どうだ〜!俊輔は凄いだろ〜!」と親指を立てる私。伊達男も親指を立てる。結局記録は20バナナ止まりだったけど、モザとミケよりも好成績でよかった。

最後の挑戦者はコッツァ。
今までの3人はレフティだったので、ここで右利きのコッツァのためにバナナの位置を反対側に移動させる。今日こいつは機嫌が悪いのか、単に大人しい性格なのか、他の3人が入れても外してもイマイチ反応が鈍かった。もちろん誰かが入れたときには、ちゃんと拍手していたけどね。

試し蹴りも含めて、何本蹴っても全然入らないコッツァ。ミケたんは奇声を発しながら、モザの肩につかまってピョンピョン飛び跳ねている。こらこら、少しは真面目に応援してあげなさい。
モザはモザで、コッツァが3本目を外すと、いきなり俊輔の両頬に張り手を喰らわせた。この時うさこさんは思わず「何するの〜!!」と怒鳴りつけそうになったそうだ。まったくミケもモザも突拍子もないことをする奴らだわ。

黙々と頑張るコッツァの横で、完全に漫才状態のモザとミケ。そんな中でも4本目を蹴ろうとしたらボールがなかったコッツァのために、急いでボールを拾ってくる気配り俊輔。この日本のゲームをチームメイトに楽しんでもらいたいという俊輔の優しい心遣いが伝わってくる。
惜しい弾道はあったけど、この日は記録無しで終わったコッツァ。残念でした。

コッツァが終わったあと、俊輔は右足でのバナキンに挑戦していた。もう楽しくて楽しくて仕方ない様子。
収録の最後は、4選手と水沼さんがテレビカメラの前で横一列に整列。「バナナキング・コンテスト!」の掛け声と共に、両手の掌を頭の上で合わせて体を横に傾けるバナナのポーズを取っておしまい。皆さん、お疲れ様でした。

※各選手が何バナナクリアーしたかは、12月18日放映のスパサカで確認しました。現場ではちょっと遠くて確認できず。



<うさこのルックアップ> 私、実は水沼ファンでした!その2
選手が引き上げて行った後、バナナの撤収でひと騒動。
外の通路で撮影をするらしく、そのままの形で通用門を通そうとしたが、つっかえてダメ。無理をするとバナナが破けてしまうので四苦八苦してました。

結局どうやったのか無事バナナは駐車場へ向かう通路へ。
そこで、水沼さんとバナナのツーショット、そのあと、バナナだけのカットを取る。
なんと今度は水沼さんがうしろでバナナを支える。思わずその様子をと、カメラをもってかけつけると、ちょっとおどけた顔で応えてくれた。やっぱりいい人だあ。
リーメイさんが水沼さんにツーショットをお願いしていたので、私も割り込んでしまう。ごめんね。サインをしてもらうものは持ってないし、なんかそこまでするのは子供っぽい気がして遠慮してしまった。古手のファンとしては、ちょっと大人っぽくふるまうべきかな、なんて・・・。

「水沼さん、(よくぞ来て下さって)ありがとうございましたあ。俊輔を(これからも)よろしくお願いしますね!!」何か、同志としての連帯感を感じてお願いしてしまう。
もう、すっかり保護者になりきって・・・。(だって、こんな時、水沼さん以上に頼りになる人って考えられます??)「今日はちょっと、遊べたしね(よかったんじゃないの?)」水沼さんもちょっとほっとした様子だった。

そうこうするうちにレッジーナの選手たちが少しずつ出てくる気配。
通用門のところへもどると、中高生ぐらいの女の子がいっぱい門の中に入って待っている。
私も割り込んで、「ナカムラ好き〜?」と聞いてみるが、「う〜ん、だけどねえ」という反応。一人の子が「なんたらかんたらだからあ」というようなことを言って、みんなの顔を見回し、ちょっと笑いが起こる。
「なになに?」と聞くと、「え〜、なんでもない!」って感じで肩をすくめる。「ナカは結婚しちゃったからねえ」とでも言ってたんだね、きっと。



★レッジーナの愉快な仲間たち
ここで、俊輔の出待ちをしているときに目にした、他の選手たちの姿をまとめてご報告。

まず、GKベラルディ。でかい。とにかくでかい。とってもフレンドリーで、2ショット写真には気持ちよく応じてくれた。帰国後に現像した2ショット写真を見て、改めてそのでかさにビックリ。大女の私が小柄で可愛らしく見えるわ〜。

レジの金髪の王子様フランチェスキーニ君は「もう、お姉さん、どうしましょう!」っていうくらい超かわいかった。典型的な少女漫画の主人公タイプ。愛想がよくて、気取りがなくて、すごく素朴な感じ。この日は水色のシャツの上に、白地に水色のダイヤ模様のセーターを着ていて、ちょっと大学生チックなファッションだった。

密かに私のお気に入りのディミケーレ。この日は「降り龍に真紅の牡丹」という和風テイストのトレーナーを着ていた。昨夏の日本遠征時に購入したものと思われる。こんな派手な服が、似合いすぎてて恐いよ、ミケたん。
ミケたんが車で通過するときに両手で手を振ったら、ハンドルから片手を放して笑顔で手を振り返してくれた。「手を振ってくれましたよ〜♪」とはしゃいで報告する私に「ディミは自分をスターだと思っているから」とクールなうさこさん。あら、私ったらミケたんに「俺様はジャポネーゼにもモテモテなんだよね」と勘違いさせてしまったかしら?

意外にも物凄く印象に残ったのがファルシーニ。穏やかで温かい笑顔。地味だけど、全身から優しいオーラが発散されていた。この人は間違いなく性格がいいはずだ。きっと俊輔にも優しかったに違いない。不思議な魅力を持った人だった。クロスの精度がよければ、ずっとレッジーナに居られたのにね?

鮮やかな黄色いTシャツにべっ甲のフレームのサングラスをかけたソッティルは、なかなかのハンサムさんだった。今はどこでプレーしているのかしら?

先述のレイコちゃんは長く練習場に通い詰めているので、レッジーナの選手たちとはすっかり仲良しだった。そのレイコちゃん、モザを捕まえてバナナのポーズを取るようリクエスト。
モザは眉間にしわを寄せて「えーーー!」と言うものの、カメラを向けて「バナナキング・コンテスト!」と掛け声をかけると反射的にバナナのポーズ。なんてノリのいい奴なんだ。バナナのポーズを頼むレイコちゃんの発想も面白い!



<うさこのドリブル突破> 俊輔捕獲作戦 第1弾

ほとんどの選手が行ってしまった後、かなり経っても俊輔は出て来ない。
タクシーのおばちゃんには、6時に来てくれといってある。もう6時20分だ。きっといらいらして入り口のところで待っているに違いない。
でもあそこまで行っていたら俊に会えないかもしれない。ごめんね、おばちゃん、もうちょっと待っててね。

そうやって気をもんでいるうちに、ようやく俊輔が出てきた。
悟郎ちゃんが駐車場から出してきた青い車が通用門の前に停まる。俊はそのままその車に乗るみたいだ。
どうしよう、声をかけられるかしら。一応サイン用にユニも持ってきているが、リーメイさんと話し合って、報道陣やファンでごったがえしている今日は差し入れを渡すことだけに専念しようと決めてあった。

門をくぐると、あっという間にみんなに囲まれてしまう俊輔。さっき「ナカはねえ、結婚しちゃったしねえ」みたいなこと言ってたイタリアの女の子たちも集まってる。
「すみませーん。俊輔君、俊輔君」と呼びかけたところで当然聞こえない。ありゃあ、だめかなあ。
それでも輪の外側で待っていると、終わった子は少しずつ離れてくれる。無理に割り込まなくてもちょっと隙間ができたので、今度こそ突破だ。渡すものだけは渡さなきゃ!

もう一度声をかけて荷物を差し出す。いろいろ詰め込んできた二つの紙袋、指がちぎれそうだ。
「すいません、俊輔くーん、あのお、これ、日本から持ってきたんですけど」
ようやく俊輔が気付いて、「あ」と言いながら手を出してくれる。
「あの、すご〜く、重いんですけど、だいじょうぶですか」と言うと、「あ、だいじょうぶです」と言いながら、2つの袋をていねいに受け取ってくれた。

私の方は「お車まで、(ワタクシガ)お持ちします!」と言いそうな勢いだったのだけど(苦笑)。その間にリーメイさんも寄って来られて、「あの、これもお願いします」ときれいな赤い袋を差し出す。よかったあ、とりあえず任務完了。
ほんとはリーメイさんにうなぎやぺヤングの説明してもらって、「これ食べて元気つけてくださいね」と言ってもらうつもりだったのに、そこまで余裕がなかったなあ。

実は私、日本のKさんから預かってきた手紙と、タオルミーナで書いた自分の手紙をホテルに置いてきてしまった。ああ、しまったなあ。でも、明日も明後日も来るし、もう一度サインをもらうつもりだから、その時に絶対渡そう。少しずつ俊輔の邪魔にならないようにやればいいや。
俊輔はすぐ行ってしまうかと思ったが、ゆっくり車のトランクを開けて荷物を入れ、その間も顔見知りらしいイタリア人の女性と何やら話し込んでいる。おかげで、もう一度カメラを取り出して俊輔の姿をおさめることができた。(ここまではそんな余裕なかった)

話が終わってトランクを閉め、俊輔は運転席へ。私たちはちょっと道をあけるために歩道に上がって見送ることにした。車のエンジンがかかる。まわりにはまだ記者さんたちがまとわりついている。ちょっと離れた私たちからは、ちょうどフロントガラス越しに俊輔が見える。
車がゆっくり動き出した。その時、俊輔がちょっとこちらを見て、ゆっくり会釈をするのが見えた。すごくおだやかでていねいな会釈だった。

え、私たちに? え、俊輔が? 
しばらく私は状況が呑み込めなくて、ぼーっとしてしまった。あの視線の先には、確かに私たちしかいなかった。それにあれは日本人に対するていねいな挨拶のしかただった。
俊輔の動作はいつも唐突で、瞬間に終わってしまうから、会釈したとしてもペコッと言う感じだと思ってたので意外だった。渡しっぱなしで何もできなかった私たちのことをちゃんと俊輔は見ていてくれたんだ。
もしかしたら、もう一度チャンスをくれるつもりだったのかもしれない。だからトランクも閉めずに、ゆっくりいろんなことをしてくれてたのかも。必死だった分、そんな気遣いに気が付きませんでした。でも、いいの。声も聞けたし、一通り渡せたし。ありがとね、俊輔。



★愛のペヤング大作戦(うさこさんと少々記述がかぶりますがご容赦を)
最近試合に出ていないというのに、このナカムラ人気はなに?!
ちびっ子や女性ファンの熱狂に、正直私は驚いていた。レッジーナのアイドルというのは本当だったんだね。
私の近くにいた5歳くらいの男の子は、俊輔が出てくるまでの間ずっと「ナッカムーラ!」と叫びながらクルクル走り回っていた。俊輔のこと、そんなに好きなんだ。うれしいな。

やっとクラブハウスから出てきた俊輔は、チノパンに黒い長袖のTシャツ、サッカーボール型のネックレスといつものスタイル。
俊輔の登場と共に「ナカ、ナカ!」「ナカムーラ!」と黄色い歓声が上がり、あっという間にイタリアの姉ちゃんたちに囲まれてしまった。揉みくちゃにされながらも、淡々とサインや写真撮影に応じていく俊輔。
2ショット写真撮影では控えめに姉ちゃんたちの背中に手を回している。姉ちゃん達も遠慮なく体を密着させている。いいな〜。イタリア人には、あんなサービスしてくれるんだ〜。15分でいいからイタリア人になりたいな〜。

イタリア人の振りは出来ないけど、例えば日系アメリカ人の振りをして、英語をベラベラしゃべりながら俊輔に近づいていって、いきなりハグしたらどういう反応をするかしら。
「しかたないなあ、相手はアメリカ人なんだから僕もハグしてあげなくちゃ」と思ってくれるかしら・・・。しょうもない妄想にしばし浸る私。

それにしても俊輔を囲む人の輪は途切れることがない。いつになったら私たちは差し入れを渡すことが出来のだろう・・・。

あ、うさこさんが俊輔を捕獲した!私もそばに行かなくちゃ!
うさこさんと俊輔がやり取りをしている間、私はすぐに俊輔を捕まえられるように俊輔の斜め後に潜んでいた。

次は私の番だぞー! 誰も割り込むなよー!(←リーメイ心の声)
気合たっぷりに周囲に睨みを利かす私。といっても、みんなナカムーラに夢中で誰も私のことなんて眼中にない。まったくの無意味な行為なり。

ようやく二人のやりとりが終わったので、「あの、これも受け取ってください!」と俊輔の目の前に紙袋を元気に差し出した。いきなり私の手が視界の中に入ってきたので俊輔はちょっと驚いたようだ。
「あ、はい」と小さくうなずくと右手で紙袋を受け取ってくれた。その直後、黒いコートを着た巨体のイタリア女性に俊輔を持っていかれる。わずか数秒の接近遭遇。まあ今日は差し入れを渡すことが目的だったからいいや。サインと写真は明日ね。

黒コートの女性と笑顔で話しながら、俊輔は愛車のバックドアを開けて、まずうさこさんの差し入れをしまった。次に私の差し入れをしまおうとした瞬間「あれ?」というふうに動きが止まって、紙袋の中を覗きこむ俊輔。
実は私、一番上のすぐ見える所にペヤングソースヤキソバをむき出しで入れておいたのだ。むふふふ。愛のペヤング大作戦、大成功!!(いったいどこが大成功なのかという突っ込みは受け付けておりません。あしからず。)

その後も大人気の俊輔は色々な人たちに囲まれてなかなか車に乗れない。
うさこさんと私は本日の大仕事を済ませたので、人垣から離れた所で俊輔の車を見送ろうと待っていた。最後は記者さんたちの囲みから解放され、やっと愛車に乗り込む俊輔。
ゆっくりと車を発車させながら記者さんたちに溢れんばかりの笑顔を振りまいていた。そして前を向いてこちらに走ってくると、俊輔は私たちの目の前で口元にかすかに微笑を残したまま、ぺこりと頭を下げた。
そのまま走り去っていく俊輔。5秒くらい呆然とした後、思わず後を振り返るうさこさんと私。誰もいない。私たち以外には誰もいないぞ!

「今、お辞儀しましたよね? 私たちに向かってお辞儀しましたよね?」と私。
「俊輔ってステキな子でしょ? 本当にいい子でしょ?」と俊輔遭遇2回目のうさこさん。
俊輔にお辞儀してもらうという思いがけない出来事に大感激の私たちだった。これだけでも十分にレッジョにきた甲斐があったよ。ありがとう、俊輔。

さて、もう30分以上待たせている我らがお抱え運転手の元へ走って戻らねば!
待ちくたびれて、料金を踏み倒されたと怒りまくっているかもしれない。最悪、帰ってしまったかもしれない。一目散に入り口に向かって走っていくと、おばちゃんのタクシーは門の前でちゃんと待っていた。

「おばちゃん、待たせてごめんね!」両手を顔の前で合わせ、ごめんなさいのポーズを取る。
おばちゃんは「いいんだよ」というふうに笑顔で右手を振ると、勢いよく車を発車させた。おばちゃんにはホテルに着いた時に、お待たせ賃のチップも含めて31ユーロ払った。明日もよろしくね!

後から考えると、どうしてレイコちゃんとFさんを乗せていってあげなかったんだろうと思う。むちゃくちゃ焦っていたんだなあ、私たち。それにタクシーに乗る前に落ち着いて情報収集をしていれば、翌日あんなことにはならなかったのに・・・。



★Jとの再会
ミラマーレに戻ると、なんと水沼さん御一行様(TBS取材班御一行様と言うべき?)がロビーで寛いでいた。時々テレビで見かける髪の長いイタリア人女性の通訳さんも一緒だ。

「あらあら、同じホテルだったんですね。お疲れさまでした」と互いに挨拶。水沼さんもスタッフの人たちも皆さん気さくな人たちだ。同じホテルだなんて嬉しいな♪

フロントで部屋の鍵をもらうとJからの直筆メッセージを一緒に渡された。直筆ということはJがここに来たということだよね?あれ? Jは明日レッジョに到着するんじゃなかったっけ?

メッセージによるとパレルモの予定を一日早く切り上げてレッジョ入りしたそうだ。ノエルというホテルに部屋を取ったので電話してくれと書いてあった。
某ガイドブックによると、リド駅近くにあるノエルはレッジョでも一番の安宿で、バックパッカーの溜まり場らしい。英語が通じると書いてあるので早速電話してみる。

イタリア語で電話口に出た男性に、「そちらに泊まっているJさんと話がしたいのですが」と英語で言うと、何やらイタリア語で喚いている声が聞こえて別の男性が電話口に出た。もう一度同じ言葉を繰り返すと、またしても慌てふためいている様子が電話口の向こうから伝わってくる。
これはもっと簡単な言い回しをしないと通じないかもしれない。“Mr. J, please.”と超シンプルな英語をひたすら繰り返す。しかし相変わらず向こう側はパニックに陥っているようだ。おいおい、英語は通じるって書いてあるじゃん!それに、そんなに難しいこと言ってないぞ!(そんなに難しくない言葉をイタリア語で言えない自分はどうなのさ?)

しばらくして、また別の男性が電話口に出てきた。完全なたらい回し状態である。もう半ばやけになりながら「ミスター・J、プリーズ!!」と叫ぶと「ここに泊まっているのか?」と英語で返ってきた。おお、助かった!やっと英語がしゃべれる奴の登場だ!

Jが今日の午後にチェックインしたことを告げると、「ちょっと待って」という言葉と共に受話器をゴトンと置く音が聞こえた。待つこと約1分。受話器からは半年振りに聞くJの懐かしい声が。。。
「いやー、パレルモは安いホテルが無くてさあ、レッジョに逃げてきちゃったよ。しかしそっちは凄いホテルに泊まってるね。さっき行ってきたけど、俺、どっからどう見ても場違いで緊張しちゃったよ。」
確かに。ミラマーレにバックパッカーが入っていったら、かなり目立つに違いない。

一日に何度も緊張させて悪いけど、もう一度出ておいで〜。今宵は私の部屋で再会の宴といきませう。Jは近所のスーパーで安ワインを買って飲んでいる最中だったということで、そのワインを持ってミラマーレまで来るように伝えた。

15分後にフロントからJ到着の電話。小走りで階段を降りていくと、階段前のホールでしゃがみ込んでいるJを発見。なにやってるの?
どうやら持参した飲みかけのワインをこぼしてしまったらしい。スーパーのビニール袋の底には赤い液体が溜まっていた。一緒に持ってきたハムもワイン漬けになっている。カーペットにも所々ワインの斑点が・・・。まあ元々赤っぽい色のカーペットだから大丈夫でしょう。気にしない、気にしない。(←おいおい)

気を取り直して再会の挨拶。Jはワインで濡れた右手をジーンズで拭い、「久しぶり!」と差し出してきた。「久しぶりに会えたね」と両手で握り返す私。後で聞いた話だが、Jはずっと、私と再会したときには南米式の挨拶をするのだと決めていたらしい。(イタリア式は左右両方の頬を順に合わせるが、南米式は片方の頬だけ)。それがワインをこぼして動揺してしまい出来なかったそうだ。うーん、残念。私もJと南米式の挨拶をしたかったよ。半年も南米を彷徨っていたんだから、さぞかしスマートに決まっただろうに。(笑)

それにしても半年でJの印象はガラッと変わっていた。実は「J」というのはイニシャルではない。カビラ弟に似ているから仲間内で「J」と呼ばれているのだ。
どちらかというと色白で、くっきりとした二重まぶたが優しげな雰囲気をかもし出していたのに、今では真っ黒に日焼けして頬も随分こけた。半年前からは想像できないくらい精悍な顔立ちになっている。
人間の顔って環境によってこんなにも変わるんだね。しかもJが茶髪にするなんて・・・。俊輔が茶髪にしたとき以来の衝撃だよ。



★不思議な縁に乾杯!
Jに部屋でお留守番をさせて、うさこさんと二人で食料の買出しに出かけることになった。いつもテレビで見ていたレッジョのメイン・ストリート「ガリバルディ大通り」をキョロキョロしながら歩く。

「いきなり前から俊輔とかレッジーナの選手が歩いてくるなんてことがあるのかしら?」
脳内で勝手な想像をしながら一人でウキウキ・ワクワクする私。うさこさんはうさこさんで「またここに来られたんだわ〜」と感慨に浸っている。

しばらくして、なかなかスタイリッシュなバールがあったので入ってみた(後日「世界の車窓から」で紹介されていた)。美味しそうなものがたくさんあるぞ〜♪
一通り店内をチェックした上で、牛肉の巻いたのをタマネギとかで煮込んだ料理、とろけるチーズがトッピングされた焼茄子、ボイルしたホウレン草を持ち帰り用のタッパに入れてもらう。
それとミラマーレの裏のバールでワインを一本買ってコルクを開けてもらった。これで準備万端。ちょっと買い過ぎたかな?まあJがいるから大丈夫だろう。

食料を両手に抱えてホテルに戻り、やたら広い私の部屋で宴会開始。まずは、こぼれずに残っていた赤ワインをコップに注ぎ、私たち3人がレッジョでこうやって一緒に飲んでいるという不思議な縁に乾杯。
まずはJの話に驚いた。Jは昼頃にレッジョ入りしたのだが、まず港から歩いて(!)チェントラーレ駅のインフォメーションまで行き、そこで一番安いホテルを紹介してもらって、また北のリド駅まで歩いたのだという。もちろん、巨大なバックパックを背負って・・・。とんでもない運動をしたね。今夜はたくさん食べておくれ。

偶然にもJとうさこさんの旦那様が同郷ということで、二人は一気に意気投合。私には分からない、むちゃくちゃローカルな話題で盛り上がっている。別に心配はしていなかったけど、二人の気が合って本当に良かった。

Jのこれまでの南米の旅のこと。私とうさこさんのレッジョまでの旅のこと。俊輔のこと。今日の練習場での出来事。日本代表のこと。楽しく語り合っているうちに時間はあっという間に過ぎていく。
まだまだ話し足りなかったけど、それぞれの移動の疲れを考慮して10時前にお開きとした。食べ切れなかった物は明日の朝食としてJに持たせ(荷物が多かったので、私からの和食の差し入れは明日まで預かることにした)、明日3人でサンタガタに行くためにミラマーレのロビーに午後1時に集合することを決めて解散。

一人になってシャワーを浴びても興奮が冷めやらない。疲れているはずなのに全く眠くならない。困ったもんだ。
テレビを付けると、パルマのジラルディーノのインタビューが流れていた。ジラルディーノの整った顔をぼんやりと眺めていたけど、頭の中は今日の午後のステキな出来事が走馬灯のように駆け巡っていた。
初めて生で聞いた俊輔の声。初めて生で見た俊輔の笑顔(双眼鏡越しにスタジアムで見たことはあるけれど)。思いがけない俊輔のお辞儀。同じシーンが何度も何度も頭の中で繰り返される。
時々、水沼さんの笑顔やフランチェスキーニ君の笑顔が割り込んでくるが、最後は必ず俊輔のお辞儀にたどり着く。あ〜、幸せ〜。一人でニマニマ笑いながら、いつしか私は眠りに落ちていた。。




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