南イタリア遠征記
〜グランブルーの青い海と俊輔に逢いたくて〜

☆レッジョ編☆第四日目☆2




★レッジーナ対パルマ(前半)
さ〜て、いよいよスタジアム入りだ。メインスタンドのゲートから中に入ったが、特に厳しい荷物チェックなどなくチケットを見せるだけの素通り状態。これじゃあ、発炎筒も持ち込み放題だわね(メインスタンドから発炎筒を投げ込む人はいないか?)。

階段を上がっていき、観客席にたどり着くと、目の前にはいつもスカパーで見ている風景が広がっていた。
午後の日差しを浴びて緑色に輝くピッチ。右手には熱狂的なホームのゴール裏。その向こうに建っているマンションのバルコニーにはテーブルと椅子が出ていて、そこから優雅に観戦する住人たち。
左手はガラガラのアウェイのゴール裏。といっても、アウェイの応援団のために用意されているのはアクリル板で仕切られた狭いスペースだけで、その他はレッジーナのサポに解放されている。パルマの応援団はせいぜい50人くらい。ちょっと寂しいね。

私たちの席は2階席の中央よりやや右側にある前から2番目のブロックの2列目。想像していた以上にピッチが良く見える。
「すごく良い席だね!」と3人で大喜び。特にJは一番安い席で観戦するつもりでいたので感激しまくっていた。

実は半年前、Jが旅に出る前の壮行会に私は都合が悪くて出席できなかった。だから今日のチケットはそのときの埋め合わせとしての私からのプレゼントなのだ。まあ今日は楽しんでくれたまえ、J。(←偉そうに)

何人か日本人の女性が通りかかって、私たちに座席の位置などを尋ねていく。この人たちも俊輔を見るためにレッジョまで来たんだろうな。肩透かしを食らったもの同士として、勝手に親近感を抱いてしまった。

試合前にトイレへ行ってみた。入口の近くに洗面台、奥にトイレが3つ並んでいる。トイレは「紙がない」「水が流れない」「ドアの鍵が壊れている」という三重苦だったけど、中国やベトナムでこの世のものとは思えない凄まじいトイレを経験済みの私。この程度ではビクともしない。へのカッパである。

スタジアムにいる間にうさこさんは一度もトイレへ行かなかったので「育ちの良い繊細なうさこさんは、こんなトイレじゃ用は足せないのね」と思っていた。ところが後から聞いた話によると、単に面倒だったから行かなかっただけで、「いざとなったらどこでも平気よ! 草むらでもドアなしでも!」とのこと。お上品な見かけによらず逞しくてステキ♪

レッジーナのスタメン・コールが始まった。コールしているお姉さんの声は張りがあってカッコイイ。
選手の名前が呼び上げられるたびにサポから大歓声が上がる。ああ、俊輔の名前が呼ばれるのを聞きたかったなあ。

この日のレッジーナのスタメンは、GKベラルディ、DFフランチェスキーニ、トリージ、イラネク、MFメスト、モザルト、コッツァ、テデスコ、ファルシーニ、FWステッローネ、ディミケーレ。
一方パルマのスタメンは、GKフレイ、DFボネーラ、フェラーリ、カステッリーニ、シェリッチ、MFマルキオンニ、バローネ、ブレシアーノ、ブラージ、カルポーネ、FWジラルディーノ。

4月25日時点で勝ち点29しか取れていないレッジーナは降格争いの真っ只中。
一方順位表ではレッジーナよりも遥か上にいるパルマはUEFAの出場権を狙える位置にいる。

試合開始からゴール裏ではサポが大合唱。荒くれ男どもの野太い声が束になって迫ってくるというか何というか、とにかく地響きがするような迫力である。

「うっわぁぁぁ、すんごいね〜」と私。
「駒場より凄いかも・・・」と浦和サポのJ。

そうか、レッズよりも凄いのか! そりゃ本当に凄いわ。
しばし試合を忘れてゴール裏のパフォーマンスに見とれてしまう私たち。

と、その時、大歓声が起こったのでピッチを見ると、コッツァのシュートが相手ゴール前でDFにギリギリでクリアされたところだった。そのすぐ後にはモザが決定的なヘディングシュートを外してしまう。惜しい!
ここはお行儀の良いメインスタンドなのに、周りの人たちの悔しがりようといったらなかった。さすが、本場のカルチョ。みんな熱いなあ。

試合は思いのほか早く動いた。
前半9分、パルマのブレシアーノがCKを直接レッジーナゴールに叩き込んだのだ。

意表を突くゴールに呆然と立ち尽くすベラルディ。呆然とする観客席。もちろん私たちも呆気にとられる。
しかし、一瞬の後には「ブラーボー!」「モルト・ブラーボー!!」というスタンディング・オベーションがあちこちから起こった。敵であっても素晴らしいプレーには賞賛を惜しまないという姿勢が気持ちいい。
いいな、こういうの。それにしても直接CKでの得点だなんて、2002年の日本対ホンデュラスでの俊輔の得点を彷彿とさせる。あの時は反対側のコーナーだったけどね。何だかいいもの見せてもらって得した気分♪

そこからしばらく一進一退の攻防が続く。互いに決定的なチャンスを決められない展開。
レッジーナはステッローネのヘディングがクロスバーを超え、コッツァのヘディングがかろうじてキーパーにキャッチされ、ミケがペナルティエリアに走りこむもファールを取られ、何度もチャンスがありながら決められない。チャンス到来に一気に沸き、得点できなかったときに体全体で悔しさを表現するサポの反応を見ているだけでも面白い。

その後もステッローネの強烈な左足のシュートがキーパーに阻まれ、モザのCKのこぼれ球をミケがバイスクル気味でジャンピングボレーするも枠を外れ、またまたステッローネがヘディングでボールを叩きつけるもほんのわずかだけゴールマウスを外れてしまう。
畳み掛けるような攻撃をしながらも、どうしても決められないレッジーナ。超じれったい。

周りのレジサポの反応が熱いので、私たちも釣られて熱くなる。特にJはレッジーナがチャンスを逃すたびに「うおぉぉぉぉ!」という叫びと共に地団太を踏み、頭を抱え、イタリア人顔負けのオーバーアクションで悔しがる。

はじめのうちは周りのレジサポたちは「なんか変な日本人がいる」という感じで苦笑い。でもしばらくすると、レッジーナの選手のナイスプレーにJが「ブラボー!」と親指を立てたときに、向こうも親指を立てて笑顔で応えてくれるようになった。

前半40分にはステッローネが振り向きざまに強烈なシュートを放つも、またしてもパルマGKフレイのファインプレーに阻止される。ひゃあ〜、これでも決まらないか!

結局0−1のまま前半が終了。

なんだよ〜!いつもはロングボールを放り込むだけの眠くなるような詰まらないサッカーをやっているくせに、今日はなんてエキサイティングなゲームをしているんだよ〜! もう俊輔がいないことなんて忘れてしまう楽しさだった。
と思ったら、隣ではどうしても俊輔のことが忘れられないうさこさんが、VIP席にいるはずの俊輔を必死に双眼鏡で探していた。(笑)

ハーフタイムになったので中央のVIP席を見に行ったうさこさん。しかし、俊輔は見つけられず、代わりにフォーティ会長なんかを見つけてしまい、落ち込んで席に戻ってきた。
「今日は俊輔来てないのかもしれないね」と3人で話していたのだが、帰国後スポ紙でスタンド観戦中の俊輔の写真を発見。やっぱり俊輔はそばにいたみたいだ。
見つけられなかったけど、長い時間同じ場所で同じ空気を所有していたことが何だか嬉しい♪

試合に夢中で気付かなかったけど、いつの間にか雨が降っていた。屋根のないお向かいのバックスタンドの人たちが傘をさしている。試合開始時に17度あった気温もだんだん下がってきて風も冷たくなってきた。
風邪気味でグズグズの体調をこれ以上悪化させては堪らないので、さっき露天で買ったマフラーを引っ張り出して首にぐるぐる巻きつける。これでなんとか寒さはしのげそうかな?

ハーフタイムということで、あっちでもこっちでもタバコを吸っている。つーか、試合中でも吸ってる人は結構いたんだけどね・・・。
イタリアではスタジアムでの喫煙がOKなんだ。こんな人が密集しているところでタバコを吸っていたら危ないと思うんだけど・・・。
斜め前の夫婦が二人して吸っている煙がちょうど私のところに流れてきて目に沁みる。
「も〜、煙い!!!」とJに八つ当たりする私。だって本人に言いたくてもイタリア語が分からないんだもん。



★レッジーナ対パルマ(後半)
後半開始直後、コッツァのCKをトリージが頭で流したボールがファーポストに当たってゴールに入った。

やったぁぁぁ! ついに同点ゴールだーーー!!

ゴール裏のサポの元へ飛んでいって喜びを爆発させるトリージ。
もちろんサポの喜びも大爆発。飛び上がり、拳を突き上げ、歓喜の雄叫びを上げる観客たち。
私たちも狂喜乱舞して周囲の人たちとハイタッチ! きゃあきゃあ! すっごい楽しい!

その直後、今度はコッツァのFKをミケたんがミニミサイルのように飛び込んで頭で押し込んだ。
あっという間にレッジーナ逆転だぁぁぁ!!! 
スタンドは大盛り上がり。ミケたんも吼える! 
かっこいいぞ!と思ったら、なんとオフサイドだった。ミケたん、しょぼーん。サポもへなへなと座り込む。あーあ、がっかり。

それから5分も経たないうちに、またしてもレッジーナに決定的なチャンスが訪れる。メストのクロスをステッローネがヘディング!
が、これまたフレイが奇跡的にセーブ。今日のフレイには神が降りてきているらしい。

すぐさまミケたんが詰めてきてフレイが必死に弾いたボールをヘディングで押し込もうとするが、ゴール隅を狙いすぎたのか、全くのフリーだったのに外してしまった・・・。
観客席からは大きな溜息と共に大きな罵声。
「ごらぁ!どうやったらあれを外せるんだよ! ミケのバカァー!」と、私も記念に(?)日本語で野次を飛ばしてみた。

レジの波状攻撃にパルマはたまらず2枚の選手交代を切ってきた。レッジーナにいいようにやらせてしまっているパルマDF陣はどうしてしまったのだろう?
一方、これだけ攻めても追加点を取れないレッジーナも2枚の交代。メスト→バイオッコ。トリージ→ソッティル。

しばらくすると、交代の効果が出たのか、ここまで余りに飛ばし過ぎたレジの勢いが衰えたのか、パルマが一時的に盛り返してくる。ジラルディーノが独力でゴールを狙ってきたり、ジラルディーノ&モルフェオで崩してきたりで、レッジーナ危うし!しかし、こちらも本日は決定力を欠いていた。

それにしてもジラルディーノはいい選手だわ〜。いい男だし〜♪
そのジラルディーノに仕事をさせなかった今日のレジのDF陣、大変良くできました。花マルを上げましょう。

残り10分になって思いがけずボナ投入! 
あれれ? 練習場ではピッチに姿を現さなかったのに、いつの間に怪我から復帰したの? よくわかんないけど、復帰おめでとう、ボナ!
アウトになったのは、あれだけチャンスがありながら決められなかった気の毒なステッローネ。今日は男になれなかったね。残念でした。
ボナは入ってすぐに決定的チャンスが訪れたんだけど、、、やはりフレイに止められた。うーん。

数分後、ミケのシュートをフレイがPAの外で手を使って止めたのに、信じられないことに審判はハンドを取らない。
なんで!? どうして!? 猛烈に抗議するレジの選手と怒り狂う観客たち。審判に対するサポのブーイングが凄まじくて耳が痛くなってくる。

後半もゴール裏の大合唱の勢いは衰えない。いや、むしろ勢いを増したくらいだ。なんとかチームを勝たせようと必死に後押ししている。みんな、おらが町のチームを心から愛しているんだね。

試合から意識が離れて、ちょっとセンチな気持ちになってくる。ああ、この熱狂の中でプレーする俊輔を見たかったなあ。俊輔が素晴らしいプレーをして、ゴール裏のサポにナカムラ・ソングで称えられるところを見たかったなあ。
絶対にもう一度ここに来るよ。割れんばかりの大歓声の中で光輝く俊輔を見るために・・・。

結局、そのままスコアは動かず1−1で終了。
いったい今日は何回の決定機があったんだろう。きちんと決めていれば軽く5点は取れたはずなのに・・・。

とはいえ、周りのサポは明るい表情で引き上げて行く。
そうだよね。とりあえず残留争いに希望が持てる戦い方だったもんね。
私たちも「面白かったー!」「楽しかったー!」と盛り上がりながら帰路につく。
エキサイティングな試合を見せてくれたレジのみんな、本当にありがとう! わざわざレッジョまで赴いた私たちのために、いつもと違うイケイケサッカーをやってくれたのね。(←大きな勘違い)

どうやらスタジアムと街中を結ぶ秘密の近道があるらしい。観戦帰りの人たちが民家の裏とか、明らかに私道みたいな狭いところを平気で抜けて行くので、私たちも後から付いていく。
「ここ通っていいのかよ!?」という所をちょっとドキドキしながら歩くのは、小さな冒険をしているみたいでなかなか楽しかった♪



<うさこのロングフィード> 夜景のレストラン
さて、レッジョの夜も残すところ今晩ひと晩のみ。記念すべき食事はどこにしようか思案するところだが、実は私はどうしても行きたいところがあった。別に、最後の晩にする必要はなかったのだが、結局夕べまでチャンスがなく、今日を逃すと行けなくなってしまう。

というか、きのうまでは直前になるまで「夕食はどこにしよう?」と考える余裕がなかったのだ。
そのレストランは俊輔が雑誌や「プライド」の中で、「夜景がすっごくきれいでしょ?」と紹介していたバルコニーのあるレストラン。
実際はなんというレストランなのかまったくわからなかったのだが、日本を発つ前、俊輔ツアーが催行されていたらご一緒するはずだったMさんと「今回は行きたいね」と楽しみにしていたのだった。
それがだめになり、「きっとあのレストラン、見つけてくるからね」と約束していたので、ちょっと使命感にも燃えていた(笑)。(なんだかレッジョに来て以来、探してばかりのような気もするけど・・・苦笑)。

そこで、私はおとといの散歩の途中、Jさんと別れたあとで、レストランの場所だけでも突き止めたいと街の北側を探してみたのだった。
というのも、写真からすると、海岸通りの北側の、それもかなり高いところから写されたものと思われるので、少なくとも、リド駅よりは北だろうと推測できた。

このアングルの写真は街の紹介にもよく登場するので、きっと有名な場所に違いない。
あの辺で高い建物というと、一番手はホテル・エクセルシオールである。アウェイチームが宿泊することも多い、レッジョきっての高級ホテルで、去年のパルマ戦の時もヒデたちが滞在したという話だった。

その他にも、ある程度の高さのあるビルはいくつかあるので、それらしいバルコニーを頼りに、周辺を歩き回ってみることにした。下から見たのでは、エクセルシオールは高すぎて、バルコニーを確認することはできない。でも、雰囲気や角度からするとここが第一候補なんだけどなあ。

そう思いながらも、エクセルシオールを挟んで左に海岸通りの続き、右にやや細い裏通りがあるので、一応両方をチェックしてみることにする。
右の通りは交通量も少なく、こっちへいってしまうと、夜景はちょっと見にくくなるかなあ。ホテルの向かいにあるのは博物館のビルらしい。もう閉館時間はすぎてしまったようで、扉は堅く閉まったまま。

と、十数メートルほど行ったところに、道に面して「バール&リストランテ」と書かれた明るい感じの店があった。名前からすると、どうやらここが「ピザ・ナカムラ」を出してくれる店らしい。(TVガイドでしたっけ?そんな記事が出てましたよね)レッジョ名物シラスの塩漬け(?)をのせたやつで、ちょっと食べてみたい気もする。それに、庶民的で、わいわいがやがや楽しそう。

でも、ちょっとこっち方面はお目当てのレストランはなさそうなので、方向転換して、今度は海岸通りを探索することにした。夜景の角度を確認しながらバルコニーを探すが、あってもせいぜい2階か3階ぐらいで、ちょっとあの写真は無理そう。
そうするうちに、Jさんのホテルの前まで来てしまった。いくらなんでもここからはあの写真は撮れないでしょう。しかたがないので、またエクセルシオールの前まで戻ることにした。

こうなったら、エクセルシオールにアタックしてみるしかないか。
ところがエクセルシオールというホテル、正面入り口周辺が工事中で、どこから入るのか、ちょっと見当が付かない。

しばらくうろうろしていたら、制服を着た男の人が脇の自動ドアから入っていくのが見えた。思わずその後を追って中へ。
するとそこはフロント。なんだここだったのか。とりあえずロビーをひとまわりしたが、なんとなく居心地が悪く、さっと見渡しただけで出て行きたくなった(えらい弱気)。すごく怪しい客だったにちがいない(苦笑)。

すごすごと先ほど入ってきたドアに戻りかけた時、エレベーターの横にかけられた案内のボードが目に入った。きれいな飾り文字で、フロアごとに何やら書かれている。
1階のラウンジ、上の階にもなにやらあるようだ、5階(だったと思う。記憶がちょっと・・・)にもレストラン「GALA」とある。うーん、これがくさいぞ!とあたりを見回した時、フロントの男性と目が合った。

かなり年配の落ち着いた感じのその人は、すごく感じのいい動作で近付いてきて、「マダム? 何かご用でも?」うわ、これはミラマーレの比じゃないわよ。いかにも高級ホテルのコンシェルジェ、という感じ。(いえ、私、そんなとこに行ったことはないんですが、映画なんかで見かけるでしょ?)

あまりに親切そうだったので、私はつい「あの、おたくのホテルに、夜景がすごく美しいレストランがあるって聞いたんですけど、何階でしたっけ?」とたずねてしまった。

コンシェルジェ氏「ああ、GALAですね。それなら、5階でございます」
「バルコニーもあるんでしたよね」と私。
コンシェルジェ氏「よろしかったら、ご覧になりますか? ご案内しますよ」
「ええ!? よろしいの?」とすっかりマダム気分にさせられて、何か話し方まで変わってる(笑)。

そこで、コンシェルジェ氏に案内されて、どぎまぎしながらエレベーターへ。
案内されたのは、まだ準備中のレストラン。こじんまりとした結婚式の宴会場風の部屋に、黄色いクロスのかかった丸テーブルが並んでいる。カーテンを引いてくれた窓からは、確かにあの写真そのままに海岸通りが見渡せる。これなら夜景はきっときれいに違いない。

でも、ちょっと! あのバルコニーはどこ? 見あたらないわねえ。(あとでもらったパンフにはちゃんと写っていました。寒かったのでクローズだったのかしら??)
ま、いいか。どうしても、このレストランでディナーがいただきたくなったわ。

「まだ決めてないんですけど、明日かあさっての晩、予約をお願いするとしたら、どうすればいいかしら?今お願いした方がよろしい?」
「いえ、お電話をいただければ結構ですよ」
「そうですか。では、お連れとも相談して決めてからお電話しますね」
ここでやめておけば、「すてきなマダム」でいられたのだが、私はつい聞いてしまった。
「こちらには中村選手もよくいらっしゃるのよね」

ああ、ここでマダムの品位は急降下(いや、そもそもそんなものはなかったわけですが)。あ、何も、俊輔が品がないってことではありませんので、念のため。マダムは余計なことは詮索しない方がよろしいのですわ(笑)。

ともかく、予約の電話は後ですることにし、ホテルのパンフとコンジェルジェ氏の名刺をもらって、ジーンズに大荷物の「にわかマダム」はすっかりいい気分でエクセルシオールをあとにしたのでした。

場所の候補は、昨年お昼を食べた海辺のレストラン、ほかにもさっき見つけた「ピザ・ナカムラ」のレストランや(海の幸の料理が評判だとか)、それに探せばまだまだおいしそうな店もあるかと思われたので、私はともかく、リーメイさんやJさんまで巻き込まなくてもいいわけではあった。
それに、相当高そうな店だし・・・。どうしようかな、あきらめようかな?強引にお二人を誘うのも気が引けるな。

とりあえずその晩は、「くつろげるレストランじゃなさそうだし、お二人が気が向かなかったら、私ひとりで行ってくるから・・・」とリーメイさんに報告して終わった。
でも、やさしいリーメイさんとJさんは、「せっかくだから、そこにしましょうよ! 最後ぐらいおいしいワインで乾杯したいし!」と、私のわがままにつきあってくれたのです。

ウェーン、家族だったら「何言ってるのさ、勝手にひとりで行きなさいよ!」とおっ放り出されるのがオチなのに・・・。情け深い旅仲間に、感謝、感謝です。



★最後の晩餐
さて、エクセルシオールでディナーをすることになったのはいいけど、いったい何を着ていこう。
一応深いスリットの入ったセクシーな黒のロングドレスを持ってきているけど、ノースリーブなのよね・・・。
雨が降ったり止んだりしていて気温も低いし、ただでさえ風邪気味なのにこんな服着て出かけたら自殺行為だわ。それに自分の服よりもJが何を着ていくつもりなのか、そっちの方が心配だったりして・・・。

「俺、一枚だけシャツ持ってるからそれ着ていく。下はジーンズでいいよね?」とJ。
じゃあ私もジーンズでいいや。俊輔だってチノパンに黒いTシャツ姿で食事しながら取材に応じているんだから、多分うるさいドレスコードなんてないはず。
ということで、8時にエクセルシオールのロビーで待ち合わせることにして一旦解散。

そして8時。エクセルシオールのロビーに行くと、そこには半袖の青いギンガムチェックのシャツを着たJがソファーに腰掛けていた。ちょっと、ちょっと! この寒空に半袖かよ!風邪ひいちゃうよ!

「いや、大丈夫だよ。そんな寒くないから」と頑張るJ。
あの〜、鳥肌が立っているように見えるのは気のせいでしょうか・・・。
もうこうなったら、とにかく飲んで食べて体温を上昇させよう!それしかない!

とってもカジュアルなJと私を引率してくれるのは、一人ドレッシーなうさこさん。肩に巻きつけたグレーのショールがとってもエレガント。どこからどう見てもすてきなマダムだわ〜。

エレベーターでレストラン『Gala』のある階まで上がり、夜景が良く見える窓際のテーブルに案内された。落ち着いた店内は、格調が高すぎて料理が楽しめないという雰囲気ではない。ちょっと安心。

メニューを渡されると「今夜は私がご馳走するから、何でも好きなものを頼んでね」と太っ腹のうさこさん。きゃあ、ありがとうございます! 久しぶりのというか、恐らく旅に出てから初めての豪華なディナーに大喜びのJ。

早速みんなでメニューの検討開始。
まずは飲み物ということで、シチリアの白ワインをオーダー。これがかなりいけるワインで、うさこさんは帰りにローマの空港で買い求めていた。
料理の方は、うさこさんはムール貝のパスタと牛肉のクリームソース、Jはトマトのパスタと魚のグリル、私は魚介類のスープだけを注文。連日の大食いで胃が疲れているので今日は少し休ませてあげよう。

イタリアへ行くと食べ物があまりに美味しいので、ついつい食べ過ぎて体調を崩す日本人旅行者が多いそうだ。
私も出発前にいろんな人から『食べ過ぎ要注意』のアドバイスを受けていて、夜にしっかり食べる代わりに昼はパニーニやアランチーニなどで軽く済ませてきたのだけど、それでも旅の終盤は胃薬が手放せなくなっていた。

これからイタリア行きを計画されている皆さんも十分注意してくださいませ。
といっても食べる量をセーブするのは難しい。こんな美味しいものばかり出てきたら絶対に残せないもん。残る道は唯一つ。日本にいる頃からドガ食いして胃拡張になっておくことかも・・・。

美味しいワインと美味しい料理で大いに盛り上がっているところに、日本人が3人やってきた。
一人は先日の強風の中で必死にバナナを押さえていた人だ。もう一人は通訳もしくはコーディネータらしき日本人女性。この人もバナキンがあった日にサンタガタで見かけたなあ。最後の一人は誰だか分からなかった。

「もしかして、俊輔が現れて取材が始まったりしないよね?」という淡い期待を一瞬抱いた私たち。
ドキドキしながらレストランの入り口を見つめていたが、しかし、いつまで経っても俊輔は現れず・・・。残念でした。

料理を平らげた私たちはドルチェ(デザート)をリクエスト。
え? 料理をセーブした意味がないって?(聞こえないふり)

ワゴンに載った各種ケーキをじっくり選ぶ私たち。基準はどれが一番美味しそうかということではなく、どれが一番甘くなさそうかということ。
私はイチゴのケーキを選択。何故なら俊輔がイタリアのジェラートについて「イチゴとレモン以外は甘くて食べられない」と言っていたのを思い出し、何となくケーキもイチゴは甘くないような気がしたから。
Jは「日本だど一番甘くないのはチーズケーキだよね」という理由でチーズケーキを選択。
最後まで迷っていたうさこさんは、「普通のチョコレートケーキが実は一番甘くなかったりしません?」という無責任な私の意見に従ってチョコレートケーキを選択。

デザート皿とは思えないデカイ皿に、これでもかというくらい大きく切り分けられていくケーキたち。
それを見たときに3人の頭に後悔の念がよぎったのは言うまでもない。
サービスで皿の脇にチョコレートの塊を盛り付けられ「あ〜、そんなにいらな〜い!」と悲鳴を上げるうさこさん。さてさてさて、口に入れたときに「思ったほど甘くな〜い!」となればいいんだけど・・・。

一口食べて思わず笑いだす私たち。
うん、笑うしかないよ。イタリアのドルチェに甘くないものを求めた私たちが馬鹿だった。
イチゴのジェラートは甘くなくても、イチゴのケーキは甘いのね。
日本のチーズケーキは甘くないけど、イタリアのチーズケーキは甘いのね。
でもって、イタリアのチョコレートケーキは見た目どおりに激甘なのね。
うさこさん、適当なことを言って本当にごめんなさい。残さず胃袋に流し込むためには、超苦いエスプレッソが5杯くらい必要かも。結局この夜も最後は我慢大会になってしまった。

ああだけど、本当になんて楽しいんだろう。
今夜ここで私たちが同じ時間を共有できることになった不思議な縁に感謝したい。
旅のきっかけを作ってくれたJに。
同行してくれたうさこさんに。
私たちをレッジョに引き寄せた中村俊輔という素晴らしいプレイヤーに。
この夜をもたらしてくれた全てのものに。
ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう・・・。
この夜のことは絶対に忘れない。

帰る前に店の人に頼んで、夜景をバックに3人で写真を撮ってもらった。
思えば3人で撮った写真はこの一枚だけ。上手く撮れているといいな。
窓の外は南西の方向にまっすぐ伸びているルンゴマーレ。通りの両脇にある街灯と車のイルミネーションが幻想的な雰囲気を醸し出している。故郷の横浜を彷彿とさせると俊輔がどこかで語っていた美しい夜景。
寂しくなると俊輔はここに来て、この景色を眺めながら遠い横浜に思いを馳せているのだろうか。そんなことを考えると、ちょっぴり切なくなってくる。

ホテルを出て、すぐ近くのノエルの前でJとお別れ。
「元気でね」と固く握手。
この先まだ1年以上旅を続ける予定のJ。次に会えるのはいつ何処でだろう。
次に会うときは、また私を驚かせてね。いろんな経験をたくさん積んで、更に怪しくなった(ご、ごめん)Jに会えることを期待しているよ。

何度も何度もJに手を振りながらノエルを後にするうさこさんと私。不思議と寂しさはなかった。雨に濡れた夜道を、満ち足りた気持ちでミラマーレまで歩いて帰った。





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